呼吸器科コラム

呼吸器科コラム

鼻腔内異物

鼻腔内異物

鼻腔内異物とは外鼻孔から始まる鼻腔内、および後鼻孔から鼻咽頭内に異物が存在する状態のことと定義されています1。多くのケースで突然の劇的な症状であり、心配になることが多いと思われます。

外鼻腔より混入することもありますが、口に入れたものが鼻咽頭側に逆流して鼻腔〜鼻咽頭腔に混入してしまう症例を多く経験します。

小さい異物であればくしゃみで鼻から排出されたり、逆くしゃみにより吸引され吐き出されることがありますが、鼻腔内は鼻甲介軟骨で密で細い通りであるため、いくらくしゃみをしても外鼻孔から自力での排出が困難、またはいくら逆くしゃみをしても強くハマってしまっている場合には動物病院での処置が必要となります。

 

症状

摂食時にムセた食後から、散歩で草むらを歩いた食後からなど、突然のくしゃみ、鼻汁、鼻出血、スターター、開口呼吸、逆くしゃみ、いびきなどを生じます。重症例では睡眠呼吸障害/睡眠時無呼吸発作を認め、食欲や活動性が低下することもあります。

多くが突然の急性症状であるが、症状の持続している慢性鼻腔疾患のうち1.3~5.3%で鼻腔内異物と診断されたとも報告されており、慢性経過であっても除外はできません2.3

 

 

診断

レントゲン検査・透視検査・CT検査・鼻鏡検査などで診断します。

金属や石などの異物であればレントゲン検査で明らかな異物として映し出されることがありますが、そのようなケースは非常に稀で、異物が明らかに検出されることは少ないとされています。しかし、稟告や症状から鼻腔内異物を疑ってきちんとレントゲンを読影すると、レントゲン検査だけでも鼻腔内異物を診断することは可能です

 

 

どこに異物があるかお分かりでしょうか?

このレントゲンは突然の逆くしゃみを症状に来院された症例で撮影したものです。

以前のコラムでも書きましたが、逆くしゃみは鼻咽頭に受容体がありますので、この場合、鼻咽頭周囲の病気を強く疑い、そこに着目して読影することができれば黄色に示した位置に異物があることがわかります。

 

重要なことは症状から異物の位置を推測すること、キレイなレントゲン画像を撮影することです。

 

鼻腔または鼻咽頭の閉塞が重度であれば、透視検査にて吸気時咽頭閉塞/呼気時咽頭拡張の所見が認められます。

塊状の異物であればCT検査は非常に有用ですが、草などの扁平状の異物では検出できないことがあります。直接、鼻腔〜鼻咽頭を観察することのできる鼻鏡検査が最も検出率の高い検査です4

 

先ほどのレントゲンの症例の鼻鏡検査画像です。鼻咽頭に草が混入していました。

 

治療

治療は内視鏡で摘出することです。全身麻酔が必要になりますが、取れてしまえば症状は劇的に改善します。

多くの施設では消化管内視鏡(6〜12mmほどの径)を使用し、口から入れた内視鏡を180度反転させ鼻を後ろから観察(Jターンと言います)、異物があれば摘出します。しかし、この手法では鼻咽頭は観察できますが鼻腔内の観察は不可能であり、鼻腔内評価のためにCT検査を同時に実施するのであれば良いですが、CT検査でも見落としてしまうことはあります。鼻腔内については異物を取り除くよう何度か生理食塩水で洗浄する手技を実施しますが完璧とは言えません。

 

理想的には見落とし長いように鼻の中を直接、前から後ろからの両方で観察することが必要です。そのためには3〜4mmほどの極細径内視鏡が必要となり、限られた施設でしか対応できないのが現状です(当院ではこのようなケースでも対応できるよう3.1mmのビデオスコープを完備しています)。

細い内視鏡であれば見落としがないように観察し、鼻咽頭はもちろん、鼻腔内でもあってもそのまま摘出することが可能です。

 

 

おわりに

鼻腔内異物は劇的な症状を示し、見逃されてしまうと眠れないほど重症化してしまいます。

診断や治療には全身麻酔が必要になるケースが多いですが、摘出さえできれば症状は消失します。

突然の頻回のくしゃみや重度の鼻づまり症状が認められる場合には鼻腔内異物も疑い、対処可能な動物病院で治療が必要です。

お困りの場合には当院までご相談ください。

 

 

 

参考文献

  1. McCarthy T C. (2005) Rhinoscopy: the Diagnostic Approach to Chronic Nasal Diseases. In: McCarthy TC, ed. Veterinary Endoscopy for the Small Animal Practitioner. ELSEVIER SAUNDERS, 137-200.
  2. Meler E, Dunn M, Lecuyer M. (2008) A retrospective study of canine persistent nasal disease: 80 cases (1998-2003).Can Vet J,  49: 71‒76.

  3. Lobetti R G. (2009) A retrospective study of chronic nasal disease in 75 dogs. J S Afr Vet Assoc, 80: 224‒228.
  4. Aronson L. (2004) Nasal Foreign Bodies. In: King L, ed. Textbook of Respiratory Diseases in Dogs and Cats. SAUNDERS, 302-304.